2025年7月07日
ピロリ菌について
ピロリ菌は、正式名をヘリコバクターピロリ菌と言います。らせん状の細菌でウレアーゼという酵素を作ることで胃酸という強い酸に満たされた胃内部で生息を可能としています。
ピロリ菌の感染は生涯にわたって持続することが多く、胃粘膜の慢性炎症を背景として、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)、胃過形成性ポリープなどさまざまな疾患の併発を引き起こします。
そのため、ピロリ菌感染されている場合、根治療法である除菌治療を行うことをお勧めしています。

ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌は、経口感染により感染します。主な感染時期は免疫や胃酸の弱い乳幼児期でそれ以後の感染は少ないとされています。井戸水の使用や、衛生状態が悪い環境で感染率が高くなりますが、小児期の生活環境、特に上下水道の整備などによってピロリ菌の感染率は低下を続けています。
また、幼少期に口移しなどで感染することも指摘されており、家族間、特に両親からの感染が多く、ご家族の中に胃潰瘍や胃がんなどのピロリ菌と関連する疾患をお持ちの方がいらっしゃる場合、ご自身も幼少期にピロリ菌に感染している可能性がありますので、ピロリ菌検査をすることをお勧めしています。
ピロリ菌が原因となる疾患
ピロリ菌は、胃や十二指腸に慢性的な炎症を引き起こしやすくします。ピロリ菌関連疾患としては、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、萎縮性胃炎などが有名です。
他に胃に発生する疾患として、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の1種)、胃過形成ポリープ、などがあります。
萎縮性胃炎
ピロリ菌が分泌する物質により胃の粘膜が慢性的に炎症を起こし、胃酸を分泌する組織が減少し、胃の粘膜が薄くなってしまう病気です。萎縮性胃炎を長期間放置すると胃がんのリスクを高まるので、ピロリ菌の除菌が推奨されます。
胃・十二指腸潰瘍
胃粘膜で炎症を繰り返すことで潰瘍が生じます。以前は胃十二指腸潰瘍の原因の多くがストレス、胃酸、暴飲暴食などと考えられていたましたが、現在は、ピロリ菌が原因のものが多いと考えられています。ピロリ菌が原因でないものは、胃酸、ストレス、鎮痛剤、煙草、酒、コーヒー、香辛料などが原因です。無症状の場合もありますが、腹痛、貧血、貧血によるめまい・ふるつき、黒色便を生じることもあります。胃十二指腸潰瘍の患者様にはピロリ菌がいないか検査し、感染していたら除菌するのが標準的な治療です。
胃がん
胃に生じた悪性腫瘍です。胃がんの原因として、塩分過多の食事やアルコール、喫煙などが挙げられますが、胃がん患者のほとんどがピロリ菌に感染しているとのデータもあり、ピロリ菌に感染していることがわかったら、除菌治療を行うことが重要です。ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生リスクが約1/3になると報告されています。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査には、内視鏡(胃カメラ)を必要とする検査法と、必要としない検査法があります。
内視鏡を使って直接胃の組織を調べる方法と、内視鏡を使わず、呼気(吐く息)を採ってその中に含まれている二酸化炭素を調べる方法、血液や尿で抗体をみる方法、便の中にピロリ菌の抗原があるかみる方法の4つがあります。
内視鏡を用いる方法
・培養法
胃の組織を採って、5~7日間培養して判定します。
・鏡検法
胃の組織を特殊な薬剤で染色して、顕微鏡でピロリ菌を探します。
・迅速ウレアーゼ試験法
ピロリ菌が持つ酵素(ウレアーゼ)が尿素を分解してアンモニアを作る働きを利用し、アンモニアがあると赤くなる試薬を用いて判定します。内視鏡検査後、すぐに結果が分かります。
内視鏡を用いない方法
・ピロリ菌抗体法
血液や尿などを採って、ピロリ菌に感染したときにできる抗体の有無を調べます。
・尿素呼気検査法
ピロリ菌が、胃の中で尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する働きを利用した検査法です。 特殊な尿素の薬剤を口から投与して、15~20分後に呼気を採取します。呼気中にある特殊な二酸化炭素の比率でピロリ菌の有無を調べます。精度が高くて簡単なので、今後主流になるといわれています。
・便中抗原検査
便を専用のキットを用いて採取し、便中のピロリ菌の抗原の有無を調べます。
当院では、迅速ウレアーゼ試験法・ピロリ菌抗体法・便中抗原検査により検査を行っております。
ピロリ菌の検査と除菌治療が保険適用とされる病気
・胃炎(ヘリコバクターピロリ感染胃炎)
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・胃MALTリンパ腫
・免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病
・早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃
除菌治療の流れ
2種類の抗生物質と胃酸の分泌をおさえるお薬の3種類のお薬を1週間のんでいただきます。
1次除菌
消化性潰瘍治療薬(ボノプラザン)と2種類の抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシン)を1週間内服していただきます。
1次除菌確認
内服終了から2ヶ月ほどしたら、再度ご来院いただき、便中抗原検査と呼ばれる検査をしていただきます。ここで、除菌できているか確認します。一次除菌で約80%の方は除菌に成功します。
2次除菌
1次除菌が不成功となった残り約20%の方は、内服していただく薬剤の変更し再度除菌療法を行います。ボノプラザンと抗生剤をメトロニダゾールとアモキシシリンに変更し、再度、1週間の内服を行なっていただきます。
2次除菌確認
内服が終わり2ヶ月ほどしたら、再度ご来院いただき便中抗原検査を行います。ここで、改めて除菌できているか確認します。2次除菌まで行うことで90%以上の患者様で除菌が確認されます。
2次除菌を失敗したら・・・
抗生物質を変更し3次除菌を行うことも可能です。ただし、2次除菌後は自費診療となります。
健康診断でピロリ菌感染を指摘された方、ご両親や兄弟にピロリ菌感染者がいる方、
胃痛などでお困りの方は、まずは一度ご相談ください。
よくある質問
ピロリ菌に感染しているかどのような検査をすれば分かりますか?
胃カメラ検査を受けていただく事でピロリ菌感染の有無を把握することができます。また、胃カメラ検査だけでなく、採血や便検査、尿検査などで調べることもできます。
ピロリ菌感染するとどのような症状が現れますか?
ピロリ菌に感染すると、胃に痛みを感じたり、不快感を生じることがあります。中には無症状の方もおられますので、まずはピロリ菌の感染の有無を調べることが大事です。
ピロリ菌は人に移りますか?
ピロリ菌は、経口感染することがあるため、感染しやすい幼少期に口から口に感染する可能性があります。しかし、成人の場合、新たにピロリ菌感染することは考えづらく、経口感染もリスクは低いと考えます。