2025年7月03日
胃炎
胃炎とは、胃の粘膜(胃の内側を覆う粘膜)に炎症が起きた状態の総称です。
胃は、消化を助けるための胃酸や酵素を分泌していますが、これらの刺激から胃自身を守るための粘膜が損傷を受けると炎症が発生します。この炎症が胃炎です。胃炎には、急性と慢性があり、原因や症状・治療法が異なります。

胃炎の原因
薬剤:
NSAIDs(ロキソニンやバファリンなど)、ステロイドなどが胃の粘膜を傷つける原因となることあります。
アルコールや喫煙:
大量飲酒により胃粘膜を直接刺激したり、喫煙は胃酸を過剰に分泌させたり、胃粘膜の血流を悪化させ胃の粘膜が傷つきやすくなります。
ストレスや食習慣:
精神的・肉体的ストレスにより胃酸分泌が過剰になり、粘膜が損傷することがあります。
また、辛い食べ物、酸味の強い食品なども胃酸の分泌を刺激し胃の健康に悪影響を及ぼし、胃炎を引き起こしやすくします。
ピロリ菌感染:
ピロリ菌に感染した胃は、慢性胃炎の一つである萎縮性胃炎を引き起こします。
萎縮性胃炎とは、胃の内壁が薄くなり、胃の粘膜が萎縮する状態を指します。この病気は、胃酸の分泌が減少し、胃の防御機能が低下するため、胃腸の健康に影響を与えることがあります。進行すると胃がんの発症リスクが高なります。
胃炎の主な症状
上腹部の痛み(胃痛)
胃の中央部や上腹部に鈍い痛みや重苦しさを感じることがあります。
胸焼け・胃のむかつき
食後に胸焼け(胃酸が逆流する感じ)や、胃が重く感じることがある。
吐き気・嘔吐
食後に吐き気がすることがあり、最悪の場合嘔吐することもあります。
食欲不振
食べる気がしない、または食後に胃が満腹感を感じやすくなることがあります。
胃の膨満感・ガス
胃が膨れている感じや、ガスが溜まったように感じることがあります。
胃酸過多
胃酸の分泌が増えることによって、胃の不快感や胸焼け、酸っぱい液体が喉に上がることがあります。
胃炎による胃痛は、みぞおちのあたりに鈍い痛みを感じることが多いですが、急性胃炎の場合は鋭い痛みや灼熱感を伴うこともあります。また、痛みは空腹時に強まる傾向があります。腹痛は消化不良やガスが溜まることによる場合もあり、症状の継続時間や程度に注意する必要があります。
胃カメラによる診断
胃炎の診断において最も有用な検査が胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)です。胃カメラでは、鼻または口から挿入した細いカメラで胃の内部を直接観察します。 胃粘膜の炎症の状態や潰瘍の有無を確認でき、必要に応じて組織の一部を採取して病理検査(生検)を行うことができます。生検では、ピロリ菌感染や胃がんの可能性も精査できます。
血液検査や画像診断
血液検査:
ピロリ菌感染の有無や炎症の指標となる項目を測定し、ピロリ菌感染の有無と炎症の程度を判定します。
腹部エコー・CT検査:
場合によっては腹部エコーやCTスキャンなどの画像診断が補助的に用いられます。これらの検査は胃炎以外の消化器疾患を鑑別するためにも有用です。
胃炎と診断されると、医師はその原因や重症度に応じた治療計画を立てます。軽度の胃炎では生活習慣の改善が中心となり、重症の場合は薬物療法が必要です。診断後は定期的にフォローアップ検査を行い、治療効果を確認します。
胃炎の治療方法
薬物療法の種類と効果には以下のようなものがあります。
胃酸分泌抑制薬
胃酸が過剰に分泌されることで炎症が引き起こされるため、胃酸の分泌を抑える薬がよく使われます。
プロトンポンプインヒビター(PPI)
例:オメプラゾール、ランソプラゾールなど
胃酸の分泌を強力に抑える薬で、胃の粘膜を保護します。
H2ブロッカー
例:ファモチジン、ラニチジンなど
胃酸の分泌を軽減する薬ですが、PPIほど強力ではありません。
胃粘膜保護薬
胃粘膜をコーティングし、刺激から守る薬です。
例:レバミピド、テプレノンなど
ピロリ菌除菌(抗生物質)
ピロリ菌が胃炎の原因である場合、除菌治療が必要です。
3剤併用療法
例:クラリスロマイシン、アモキシシリン、プロトンポンプインヒビター
ピロリ菌の除去を目指す抗生物質と酸分泌抑制薬の組み合わせです。
生活習慣の改善
胃酸の分泌を刺激する、飲酒・喫煙を控えることが推奨されます。栄養のバランスの取れた食事は1日3回規則正しく摂ることが大事です。また、食後にすぐに横になると胃酸が逆流しやすいため、食後30分から1時間程度は横にならないようにしましょう。
ストレス・睡眠管理
過度のストレスは胃酸の分泌を促進し、胃粘膜を傷つける原因となります。リラックスできる時間を作り、趣味や運動、十分な睡眠などでストレスを軽減しましょう。
定期的な健康診断
胃炎や胃がんのリスクが高い場合、年1回の胃カメラ検査が推奨されます。
特にピロリ菌がいる場合や除菌治療後、血縁者に胃がんの既往がある場合は、リスクが高まるため注意が必要です。特にピロリ菌感染や萎縮性胃炎を有する場合、胃がんの発生リスクが高いため、早期発見と予防が鍵となります。
当院では胃がん検診や鎮静剤を使用した胃カメラ検査を行っております。
気になる症状のある方は、お気軽にご相談ください。