2025年12月10日
脂肪肝とは?
脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態のことです。健康な人でも少しは脂肪がありますが、それが増えすぎると、肝臓の働きが悪くなり、病気が進行することがあります。最近では、肥満や糖尿病など代謝に関わる問題と関連する脂肪肝を「MAFLD(代謝関連脂肪性肝疾患)」と呼び、より広く注目されています。
原因
脂肪肝は、食べすぎや運動不足によって起こりやすくなります。特に甘いものや脂っこいものをたくさん食べたり、お酒を飲みすぎたりすると、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。
また最近では、ジュースや清涼飲料水、お菓子などに含まれる果糖(フルクトース)のとりすぎも脂肪肝のリスクになるとわかってきました。果糖は肝臓で直接代謝されるため、過剰にとると肝臓に脂肪がたまりやすくなるのです。
さらに、太っていない人でも脂肪肝になることがあります。特に日本人では「PNPLA3」という遺伝子に特徴がある人が多く、痩せていても脂肪肝になる体質を持つ方が約5人に1人いると言われています。このような方は、肥満はなくても脂肪が肝臓にたまりやすいため、早めの予防や対策が大切です。
症状
脂肪肝は、ほとんどの場合、自覚症状がありません。健康診断などで「肝機能の数値が高い」と言われて気づくことが多いです。病気が進むと、だるさ、右のわき腹の重さ、お腹の張りなどが出ることもあります。
検査・診断
脂肪肝は、血液検査で肝臓の数値(AST、ALTなど)を見るほか、腹部エコー(超音波検査)で脂肪のたまり具合を調べます。必要に応じて、CTやMRI、特殊な血液検査で肝臓の硬さ(線維化)などを詳しく見ることもあります。
放っておくとどうなるの?
脂肪肝の一部は、「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」という状態に進行し、さらに肝硬変や肝臓がんになることもあります。また、肝臓だけでなく、心臓病や糖尿病、腎臓病など、全身の病気とも関係しています。
治療法(生活習慣がカギ)
今のところ、脂肪肝そのものを治す特効薬はありません。治療の基本は、「生活習慣の見直し」です。特に、体重を5~10%減らすことで、肝臓の脂肪が減り、炎症も改善します。
食事では、カロリーを控えるだけでなく、果糖を含む清涼飲料水やお菓子などを減らすことも大切です。バランスの良い食事(甘いものや脂っこいものを控えめに)と、無理のない運動(1日30分の早歩きなど)を続けましょう。
糖尿病や高血圧、脂質異常などがある場合は、それらの治療もしっかり行う必要があります。
予防と再発防止
脂肪肝は、早めに見つけて対策すれば、十分に改善できます。食事・運動・睡眠・禁煙など、健康的な生活を心がけることが、予防にも再発防止にもつながります。特に遺伝的に脂肪肝になりやすい方は、肥満がなくても注意が必要です。
最後にひとこと
脂肪肝は「沈黙の臓器」と言われる肝臓に静かに起こる病気です。でも、生活を少しずつ見直せば、ちゃんと良くなっていきます。あせらず、できることから始めて、一緒に肝臓を元気にしていきましょう。
坂井クリニック 副院長 坂井 大志
参考文献:
日本内科学会雑誌 109 巻 1 号
日本肝臓学会 / 日本消化器病学会 編 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)